雨とクリームソーダ

 

興味がある写真家の展示が私の街でやっていることに今日の朝気が付いて、丁度今日は駅前の本屋さんに行く予定だったので なんていいタイミングなんだ とルンルン気分だった。 ギャラリーに行く時は少しだけ背伸びをした服が着たくなる。お気に入りのワンピースと革靴、そしてお化粧もしっかり。 万全の私の出来上がり。 

 

発売日に買ってしまうくらい好きな漫画の新刊(私にしては珍しい)と、ちょっとお高い哲学書1冊を買い、長居してしまったな なんて思いながらギャラリーへ向かった。 ホテル新宿、と名付けられた私の街のよくわからんホテルを横目に お前はここにいても新宿なのか と心の中でツッコミをいれていたら、雨。ゲリラ豪雨。 名前、全然かわいくない。私の折り畳み傘で防げるレベルの雨ではなく、髪も肩も足も靴も背中もびしょ濡れ。小さな横断歩道の信号待ち、隣に立ったサラリーマンと「雨、すごいですね」って目で話した、気がする。 せっかくのお気に入りの洋服も靴も髪型も全部台無しで凹んだ。 しばらく歩いてギャラリーに着いたけれど雨はまだ止む気配は無く、びしょ濡れでしょぼくれた私は入り口前を2往復しただけで引き返してきてしまった。 作品濡らしちゃったら嫌だし、ギャラリーの床濡れても困るし、何よりしょぼくれた状態で作品と向き合うのなんか違うなって、万全の状態で向き合いたかった。なんてせっかく行ったのにさ、引き返してしまう私のそういうところ、ちょっとだけ気に入ってる。

帰り道、傘も荷物もぶん投げて雨に当たりたい気分になったけど、ぺらぺらのトートバッグの中に大切なノートと本が入っていることに気が付いて 赤子のように抱えながら歩いた。 いつかまた君に当たったらショーシャンクの空ごっこを思いっきりやってやる。行く予定だった大好きな喫茶店のクリームソーダも断念。また今度、楽しみは延期。

 

地下鉄を降りて、最寄駅に着いたらきんきらりんに太陽が輝いていて ふざけんなって気持ちになったけれど、まあ こういう日もあるよね。 今日のこと。 おわり。