夏が終わる話をいつまでもしていたい

 

自分の耳の付け根を見てみたい。 自分のことなのに自分が一生見れないであろう部分に惹かれる。自分が見えない部分こそが自分なのではないかと思ってしまうので、他人の耳の付け根あたりはガン見しがち。なんて話はどうでもいいのだ。

 

すっかり夏が終わる空気が漂っているね。やっぱりあっという間。やりたかった花火も海も祭りも今のところ一切してないね。 この ああ、出来なかったなあ っていう後悔が夏を夏にしている気がする。 仕事終わりの猛ダッシュ、目の前で行ってしまうバスほど虚しいものはない。凹む気持ちを紛らわすようにコンビニに入ってアイスを買った。 

坂道を下っていたら白髪のおじさんが自転車でヨロヨロ蛇行しながら登ってきた。 坂道を自転車で登るの難しいよね。寒くて長袖カーディガンを着ている私と、ノースリーブハーフパンツのおじさんがすれ違った。すれ違いざまにおじさんが森山直太朗の夏の終わりを歌い出したので、私は驚いて立ち止まってしまった。 そうだな、夏は終わるよな とおじさんに心の中で返してまた歩き出した。嘘のようで本当の話。 

足に止まった蚊を叩いたらストッキングが自分の血で汚れた。季節がもう終わってしまうからきっと蚊も必死だったんだね ごめんよ。 痒いぜ。