どこまでだって、いけるよきみは

 

全く笑わない子供だった、という記憶に支配されて、大人になった今でも自分がよく笑うと言われることに疑問を持っている。 どちらかというと過去に支配されがちで、どうしようもない後悔に殺されそうになることがよくある。 と言いつつ、寝たら大抵のことは忘れて毎朝元気に挨拶ができるのでよくできた脳みそだと褒めてやりたい。 

タンスの中から幼い頃に読んだ本が出てきた。 良いと思った言葉に細い付箋を貼りながら読むのにハマっていたようだ。まるでサボテンのようにトゲトゲになった本を撫でて、埃をはらった。初めて訪れる街の人気のない深夜の駅へ降り立つように目を凝らした。所在ない焦りが、突き動かす。あれもこれも、これまで行った何もかもが不足だったと感じる。そうだ。そうなんだ。あらかじめ決められたものが僕らにはある、けれども、けれどもだ。言いたいことも、やりたいことも、この先どんな名前が欲しいかなんて欲もない。 なんにもないけど、なんにもないわけではない。どうでもいいと言いつつ、全然どうでもよくない。 

狭いな、窮屈だな、退屈だ、と思ってしまうのは、自分の世界が狭いからだ。夏だし、窓を開けるところから始めよう。どこまでだって いけるよきみは。